Malaysiaでの海外駐在3年目の私が駐在員の給料をどの通貨でいいか解説します.
本記事では次のような疑問にお答えします.
海外駐在員の給料に関する疑問
- 海外駐在員の給料は100%現地通貨で支払われるの?
- 駐在員の給料は日本円と現地通貨の割合はどれ位にすればいい?
- 円安の時は現地通貨を多くした方がいい?
海外駐在員になると,給料を日本円でもらうか,赴任先の現地通貨でもらうか通貨比率を選んで指定することができます.
海外生活に必要な資金は現地通貨で最低限受け取る必要がありますが,悩むことは「生活に必要な額以上に現地通貨の給料割合を増やすべきかどうか?」ということです.
本記事を読むと,海外駐在員になった時に給料を現地通貨でもらうか,日本円でもらうかの判断ができるようになります.
為替については自分の力では動かすことができないので,自分のリスク許容度を知った上で,その許容範囲内で為替損を抑える戦略が必要です.
私はMalaysiaで駐在3年以上しています.新型肺炎による経済の混乱で為替はジェットコースターのように乱高下して,一時期は大きな為替損を覚悟しました.結果的には現地通貨を日本円に換金した時に,120万円ほどの余剰益が受け取れる見込みとなりました.
こんな方におすすめ
- 海外赴任に向けて準備している方
- 海外駐在をしていて,帰任後の現地通貨をどのように扱うか悩んでいる方
この記事では,海外駐在員が給料を受け取る際に,日本円と海外通貨の受け取り配分をどうするかということを説明します.
本記事のポイント
- 駐在員給料の通貨の決まり方
- 為替と帰任は駐在員がコントロールできない要素
- 海外駐在中は円高,帰任とともに円安になると有利
- 現地通貨建ての資産で約120万円の利益が出そうな私の実例
本記事でお伝えしたいことは,為替益を期待することは難しいので「いかに現地通貨の蓄えを最小限にしてリスクを抑えるか」と言うことです.
本記事は為替の影響に大きく左右され為替は予想ができないため,私と同じ方法をとっても必ず為替益が得られるわけではないことはご留意ください.判断はご自身の責任にてお願いいたします.
駐在員の給料はどの通貨で支払われる?
駐在員の給料が支払われる時の給料について解説します.
個別の会社によって給料算出の仕組みが異なりますが,本記事でお伝えすることはあくまで一例としてご参考ください.
給料は日本円を基軸に決まる
私の会社では給与は日本円を基軸として決められています.
赴任先の国におけるインフレ率,生活環境などを踏まて給料が一定基準になるように調整されています.
ポイント
日本円でみた時の駐在員の給料が一定になるように,現地通貨が安くなった(円高になった)ときは駐在員手当が充填されて,逆に現地通貨が高くなった(円安になった)ときは駐在員手当が減らされます.
日本円と現地通貨の割合を定期的に決めることができる
日本円を基軸に給料が決められて,日本円もしくは海外現地通貨のいずれかでどれくらいの割合をもらうか通貨比率を自分で指定することができます.
「給料の70%は日本円建てで受け取り,残り30%は外貨建てで受け取る」と現地法人の経理に申告すると,70%分の給料が日本の指定銀行口座に振り込まれ,30%の給料が現地の銀行口座に振り込まれます.
私の会社では,日本円と現地通貨の比率を指定できるのは半年に1回だけです.
給料を現地通貨でもらうときの為替
日本円を基準にして決まった給料を,現地通貨に変換するときの「為替」は定期的に見直されます.
私の会社では四半期(3ヶ月)に1回改定されます.
為替の参考値は現地の中央銀行(例えば,MalaysiaならばBank Negara)が発表する為替を3ヶ月平均をとって算出されます.
日本円と現地通貨の割合はどうしたら良い?
海外駐在員の給料を日本円建てと現地通貨建ての割合をどのように配分したら良いかを見ていきます.
日本人駐在員の場合はいずれ日本に帰る時が訪れるということが,通貨の配分を決める上で決定的な要素となります.
すなわち,いつかは現地通貨を日本円に変換する日が来ることを意識しなくてはいけません.
ポイント
海外駐在員の現地建て資産にとってのリスクは「為替」と「自分の帰任」.
本記事では日本円の評価金額を高くすることを目的に解説します.何十年と海外現地にとどまり現地通貨で生活することは想定していません.
円安・円高が通貨比率を決める上で重要な要素とはなるのですが,駐在員ごとの個別事情によって比率は考える必要があります.
円安・円高の定義
- 「円安」とは現地通貨に対して日本円が相対的に安くなること(例:USD/JPYの為替が100円から120円になる)
- 「円高」とは現地通貨に対して日本円が相対的に高くなること(例:USD/JPYの為替が100円から80円になる)
円安・円高を利用した資産運用は次の記事にまとめました.
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【駐在員の給与】円安・円高を利用した資産運用 | 3つの問題点を解説
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日本円建ての給料を多くしたい場合
日本円建ての給料を多く割り振りたい場合は次の場合です.
- 日本に残した家族・借入金返済のために日本円が必要
- 円高傾向が顕著に進んでいる
- 現地のインフレ進行が著しい
日本円建ての給料を増やしたい場合をまとめると,「日本円がすぐに必要である場合」や「現地通貨の価値が劣化(インフレ)している場合」があります.
このような場合は,給料の現地通貨比率を抑えて日本円比率をあげます.自分の1ヶ月の生活費を日頃から把握しておくと,調整がしやすいです.
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Googleのスプレッドシートを利用した家計簿が手軽かつ無料でできるのでおすすめです.詳しい方法は次の記事をご覧ください.
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【初心者向け】家計簿を作って資産防衛力を高める | 私が7年以上家計簿を続いている理由
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日本円建てで給料を受け取り,日本の銀行口座に紐づいたクレジット・カードで現地通貨の支払いをするという手はあります.
ポイント
海外駐在して間もない頃は,日本円の蓄えはある程度あるので,現地通貨への必要性の方が高い場合が多いです.
現地通貨建ての給料を多くしたい場合
現地建ての給料を多く割り振りたい場合は次の場合です.
- 赴任先での旅行・趣味で消費金額が大きい
- 赴任したばかりで現地通貨の預金がない
- 現地通貨で資産運用をしたい
- 円安傾向が著しい
私は駐在して1年目半は,100%現地通貨建てで給料を受け取っていました.
駐在したての頃は,生活に必要なものを買い揃える初期費用や1ヶ月の生活費がどれくらいか目処が立たなかったので,現地通貨での貯金を厚めに持ちました.
駐在生活が1年経つと,次の年はおおよその出費額が予想できるようになるので,給料は必要最低限の現地通貨比率に落としていきました.
円安傾向が続いているときは,無理にでも現地通貨比率をあげたくなる気持ちはわかりますが,帰任する数年先の為替はまた変動しているので目の前の損得だけで為替を読んでも結果はわかりません.
ところで,資産運用を日本でしていた海外駐在員にとって悩ましい問題は,「日本の証券口座による新規取引ができなくなる」ことです.
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赴任先現地の口座であれば資産運用が可能ですので,現地ならではの投資を検討されることも一手です.
海外駐在中の資産運用例
- 定期預金
- 普通預金
- 株式投資
- ETF(上場株式投信)
- 仮想通貨(暗号資産)
- NFT(非代替性token)
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駐在員給料のおすすめ通貨比率
駐在員の給料について,おすすめの通貨比率をご紹介します.
前提として「帰任時の為替は読めない」ことを置いて,通貨比率の方針は「帰任までに現地通貨の貯金を減らしていく」ことです.
おすすめの通貨比率方針
- 駐在1年目は100%現地通貨建て
- 駐在2年目は現地建ての貯金が半年になるように通貨比率調整
- 駐在3年目以降は現地建て貯金が3ヶ月になるように通貨比率調整
帰任した後も海外現地の銀行口座を残しておいて(自分名義の口座を開設しておいて),為替が円安になったときに自分で海外送金する方法があります.ただし,税務面での手続きが煩雑になる可能性があります.
私は日本円と現地通貨の割合をどうしたか?
Malaysiaでの駐在員4年目を迎える私(こにゃん)が実際にどのように給与の現地通貨比率を選んだかを実例としてご紹介します.
Malaysiaの法定通貨Malaysia Ringgit(読み方:マレーシア・リンギット,省略:RM)を用いて,貯金額を書きながら具体的に説明するようにします.
私自身は現地通貨を最後まで多く残してしまいましたが,本当に為替は恐ろしいです.
駐在2年目までは現地通貨100%,駐在3年目以降は現地通貨給与は1ヶ月分生活費に
私はMalaysiaに駐在してから最初の1年半は給与を100%現地通貨RMで受け取っていました.
赴任仕立ての頃は現地通貨の貯金がほとんどなくて,初めてもらった給料が嬉しくて,急いで家電屋に駆け込み扇風機を購入したことを覚えています.
駐在員3年目に武漢発の新型肺炎が大流行して,経済の混乱ともにMalayisa通貨RMは円に対して一気に安くなりました.2020年以前は1RMは27円ほどで推移していたのですが,2020年以降,25円を割り込むことがありました.
一気に円高が進んだことで顔が青くなり,会社の給料通貨比率を変えて日本円を多くして,現地通貨の給与は1ヶ月分の生活費まで減らしました.
現地通貨はほとんど定期預金で年率3%運用
Malaysiaの政策金利は2020年以前は3%近くあったため,貯金のほとんどを定期金利に預けていました.
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しかし,2020年3月以降,武漢肺炎によりMalaysia経済が感染症で大きな痛手を被ったことから,Malaysia政策金利も1.75%まで切り下がり現地での定期預金の旨味が大きく後退することになりました.
利息と為替益で115万円儲かりそう
順調に積み上がる定期預金の金利と乱高下が激しい為替のおかげで,現地通貨建ての資産の評価額がどうなるかドキドキしていました.
本記事を書いている2022年4月時点の為替を元に計算すると,日本円での評価額で定期金利の利息と為替益で「115万円の利益」がでる見込みです.
現地通貨を日本円に変換していないため確定ではありません.
日本円での評価額
具体的には,現地通貨建ての資産額は次のように変化しました.表記は全て日本円です.
現地通貨建ての資産変化
現地通貨の貯金 | 9,000,000円 |
駐在4年目での日本円評価額 | 10,150,000円 |
差益(12.8%) | 1,150,000円 |
現地通貨を日本円に変換する際の為替については,
- 現地通貨の貯金:会社で給与が支払われたときの会社の為替を加重平均にて適用
- 駐在4年目の日本円評価額:2022年4月時点の実勢為替RM/JPY 29.0を使用
現地通貨建ての給料積み立て以外にも,日本円建ての給与積み立てがあります.
日本円評価額の差益内訳
差益115万円の内訳は次となります.
差益の内訳
現地通貨の貯金を日本円にしたときの差益1,150,000円(12.8%)の内訳は,
定期預金の金利(4.8%) | 435,000円 |
為替益(8.0%) | 715,000円 |
現地通貨と日本円の為替益が大きく貢献しています.
日本銀行の政策金利の利上げ見送りもあり,2022年3月末から急激な円高が進行していることが背景となっています.
2020年,2021年の為替であれば為替による損失が大きすぎて,定期預金の金利ではまかないきれず,合計では日本円評価額が差損になっていました.
まとめ:円安・円高は予想できない,現地通貨は最小限に
本記事では,海外駐在員の給料をもらうときに,現地通貨と日本円でもらう仕組みと,おすすめの通貨比率を解説しました.
おすすめの通貨比率方針
- 駐在1年目は100%現地通貨建て
- 駐在2年目は現地建ての貯金が半年になるように通貨比率調整
- 駐在3年目以降は現地建て貯金が3ヶ月になるように通貨比率調整
駐在員の予測できないことは,為替だけでなく,自分自身の帰任時期です.
目の前の為替に振り回されて,損得を考えると,思わぬときの帰任となり目論みと違う資産形成の結果になります.
本業の海外での仕事で本領を発揮して,海外生活を満喫するためにも,不必要に為替リスクをとりにいかずに最低限の現地通貨建ての給料で過ごすことが良いと私は考えます.
ここまで本記事をお読みいただきありがとうございます.
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