2020年10月14日施行されたKlang Valley一帯のCMCOから,本日10月24日で11日経ちました.
今週を振り返ると,Malaysia国内は相変わらずCovid-19の感染状況が落ち着かず,政治による混乱が多発した1週間でした.
今週のnewsを振り返り,来週の動向を考えたいと思います.
今週の気になるMalaysia国内の動向をまとめます.
ポイント
- 管理職100万人を対象とした,在宅勤務を10月22日から政府主導で指示.
- Muhyiddinn首相が10月23日,国王に謁見して,非常事態宣言の発令を請願.国王は近日中にMuhyiddin首相の非常事態宣言の提案内容をMalay君主と協議の上意向を伝えると発表がありました.
- CMCO発令後も,1日あたり新規PCR陽性者数は600名を超えています.前回のMCO中でさえ,1日あたり陽性者は300名以下でした.
- Dr. Noor Hishamは,CMCO解除の基本再生数目安を0.3と定めました.Selangor州内のCovid-19基本再生数R0は1.2でした.
100万人対象の強制在宅勤務令
突然の在宅勤務令に混乱
2020年10月20日(火),Ismail Sabri 上級大臣はCMCOが実施されている地区の民間企業.公共機関の管理職,監督職は2日後,10月22日からWFH(Work From Home,在宅勤務)に切り替えるように指示をしました.
在宅勤務令の経緯は下記blog記事にまとめましたので,ご参考ください.
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2回目のCMCO 8日目,強制在宅勤務に突入
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目的は,職場での人と人の接触を減らして,感染拡大を防止することです.
全員PCR検査の政策とは調和性はよいですが…
現時点では,感染者との濃厚接触者(嫌な言葉です)が一人でも職場にいるだけで,その濃厚接触者の接触者も全員PCR検査を受けなくてはいけません.
Malaysia政府は今PCR検査を症状がない人に対しても無造作に行っており,PCR検査数(1日25,000件)とPCR検査の偽陽性率を考えると,身近な誰が”陽性”になってもおかしくはありません.
会社の一部門が丸ごとPCR検査に行かされた日には,業務が停滞すること間違いなしです.
疑わしき人は全員PCR検査する政策を前提にすると,在宅勤務はrisk分散の上でも大きな役割はあります.
しかし,そもそも,症状のない疑わしき人に全員PCR検査をする必要があるかは疑問です.
職場では政府の定めたSOPを遵守して,人と人の距離を開けて,maskをして仕事をしています.換気にも非常に気を使っています.感染riskは最小限にしながら,働ける環境を整えています.
感染症状が出ていない接触者にPCR検査を行う有効性と社会的損失を考慮したほうが良いと思います.
会社としては,感染の可能性がある人のみを在宅勤務に変更するなど,臨機応変な対応はできるはずです.
Muhyiddinn政権の管理職は一律在宅勤務という政策は経済界に混乱をもたらすだけです.
Muhyiddinn首相,国王に謁見して非常事態宣言請願
感染拡大防止のために非常事態宣言?
Muhyiddin首相は10月23日,Pahang州Kuantan王宮に住む国王に謁見して,非常事態宣言発令(Proclamation of Emergency)を国王に請願したと伝えられています.
国家非常事態宣言がなされることで,具体的な影響は不確定です.
非常事態宣言の定義は,下記のようになっています.
ポイント
- 平常時には許されていない権力を内閣は行使することができる
- 非常事態宣言は国王のみが行える.宣言に対して,法廷に提訴することはできない.
- 安全,経済,秩序の危険が及んだ際に,国王が非常事態宣言を判断する
- 非常事態宣言が発令された際は,連邦政府は州政府を管轄する
→Malay Mail: Six questions about: Declaring an emergency in Malaysia
要点としては,「権力を内閣に集中させて,国家の危機(今回は感染病)を乗り越える」ということです.
政敵からの批判としては,「非常事態宣言を政治利用している」,「経済をさらに悪化させる」などです.
過去に全国で2回非常事態宣言発令
Malaysia建国後,非常事態宣言が発令したのは過去4回あります.内,全国で発令したのは2回(赤字の2例).
簡単な流れ
- 1964年,Indonesia-Malaysia 対立(Confrontation)にて全国で発令
- 1966年, Stephen Kalong Ningkan氏の政治統制力をめぐる政治混乱により,Sarawak州にて発令
- 1969年,May 13 人種暴動のため,全国で発令
- 1977年,Barisan Nasional州議会解散を求めた政治局面における政治混乱と路上暴行にて,Kelantan州で発令
1969年のMay 13暴動の際は,非常事態宣言時に下記のような対応が取られました.
ポイント
- 夜間外出禁止令が全国で発令
- 国会の延長
- 州地方政治委員会(State and District Operations Councils)が地方政治の権限を管理
- 新聞発行の差し止め(同年5月14日から5月17日の期間)
→TRP: Malaysia Went Into Emergency Twice Before & It Was NOT Pretty
すでに,MCO(Movement Control Order)の発令以降,国民の行動は萎縮しており,追い討ちをかけるような非常事態宣言が必要かは疑問があります.
感染病との戦いに対して,非常事態宣言が有効な方法にはなり得ないと私は思います.
非常事態宣言が国王によって発令されるかどうかは来週以降になりますが,Muhyidinn政権がさらに国民の活動をさらに制限する意図を持っていることだけははっきりと分かりました.