中国とMalaysiaは,Covid-19のワクチン開発に向けて開発合意を行いました.
USの製薬会社がワクチン開発で有効な臨床実験を発表している中,Malyasiaの方針が吉と出るか気になります.
累計陽性者数は5万人を突破,死者数は横ばい
本日2020年11月18日,PCR検査の陽性者累計数は初めて5万人に到達しました.
感染症が原因とされる死亡者数は,累計で322名です.
Covid-19の死亡者数は1日あたり4人前後の日が続いており,個人的にはCovid-19は”正しく恐れれば”良い程度の感染症に過ぎないのではないかと思っています.
現在のMalaysiaは全国的な行動制限令CMCOを12月6日まで実施しており,感染症予防のためにあまりに多くの生活,経済を犠牲にし過ぎています.
現在の感染状況が続いたとしても,2020年内の感染症者が原因の死亡者数は400-500名です.
Malaysia政府は現在までの防疫体制の成果による,この数字をむしろ誇るべきです.
しかし,私の目にはMalaysia政府の姿勢はいつまでもCovid-19に対して弱腰に写ります.
そろそろ,感染症予防策に重点を置き過ぎずに,本格的に経済を刺激するには何をすべきか考えるように政府の姿勢も変化することを望みます.
RM3225億(日本円 約8兆円)規模の2021年予算案も,経済を大きく回復させるためには今一つの内容でした.
大事なことではあるのですが,Covid-19で生活苦に陥った人々を救う事に主眼があり,経済を活性化させるための刺激策はあまり目立ちませんでした.
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Malaysiaの2020年Q3(7-9月)GDPは,前年比2.7%減となりました.前期Q2(4-6月)からは回復をしているものの,改善内容をみても一時的なもので,これから上昇基調を保てるか注意深く見守りたいです.
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ところで,「日本の2020年Q3 GDP年率21.4%増」という報道ですが,よく数字の定義を確認すると,報道の印象操作のように読み取れます.
日経新聞は多少色をつけて報道しているように感じますが,Malaysiaの報道機関も報道によって経済回復基調を盛り上げてほしい,という気もします.
→日経新聞:GDP7~9月年率21.4%増 4期ぶりプラスでも回復途上
Malaysiaは中国と協力して新型肺炎ワクチン開発に
Putrajaya,中国と新型肺炎のワクチンを共同開発合意
2020年11月18日,Malaysiaは中国と新型肺炎のワクチン開発で協力することを発表しました.
→Reuters: マレーシアと中国、新型コロナワクチンの開発協力で合意
政府のprelease発表の内容を抜粋します.
Malaysia China signed agreement on vaccine development. Under the 5 year agreement, with the option of rollover every year if both countries agree will see Msia given priority access to vaccines supply, knowledge sharing, vaccines R&D to combat #COVID19 through science diplomacy. pic.twitter.com/TZihkQ6Go7
— Melissa Goh (@MelGohCNA) November 18, 2020
発表の要点を整理します.
ポイント
- Malaysia政府は本日11月18日,中国と新型肺炎のワクチンを共同開発する合意した
- 今回の合意は,2020年10月13日における両国間の感染症制圧後の協力と調和に関する合意に基づく.
- Malaysiaは,中国が開発したCovid-19のワクチンを優先的に入手する
- 合意内容は,合意から5年間有効である.両国の合意のもとに,合意は1年間ごと更新される.
Malaysiaと中国のワクチン開発に関する発表に,疑問が頭の中に浮かび上がります.
疑問1.なぜUSと手を組まないのか?
直近,新型肺炎に対する有効なワクチン開発の報道が複数ありました.
11月9日,Pfizer社(米)とBioNTech(独)が共同で開発したワクチンが,第3臨床段階に入っており,被験者に対して90%の有効性を示しました.
1週間後の,11月16日,Moderna社は,第3臨床試験に入ったワクチン開発で94.5%の抗体有効性を示しました.
素直な疑問としては,すでに第3臨床段階に入った製薬会社がある中,まだ有効なワクチン開発結果を出せていない中国と手を組む必要があるかということです.
ワクチンを摂取した人は90%以上の確率で,Covid-19の抗体を身に付けることになります.
一人の感染者が,何人の人に感染させるかの指標である,基本再生算数が,感染症の拡大を測定する上で重要です.
- 基本再生算数が1より大きければ,感染拡大局面
- 基本再生算数が1ならば,感染局面維持
- 基本再生算数が1より小さければ,感染縮小局面
感染数理modelによれば,感染数の増減は指数的です.
基本再生算数が2ならば,一定時間ごとに2倍,4倍と増えていきます.逆に基本再生算数が0.5ならば,一定時間ごとに,0.5倍,0.25倍と減ってきます.
もし,Pfizer社・BioNTech社,Moderna社のワクチンの抗体有効性が90%だとすると,1人の感染者が感染する人数が90%減になります.ただし,国民全体がワクチンを投与した前提です.
Malaysiaでは,基本再生生産数は1.1ほどですので,国民全員がワクチンを摂取すれば,1人の感染者が感染させる人数は0.11人になります.
1→0.11→0.0121→…と指数的に感染者数は減っていき,実質上Covid-19はワクチンにより根絶します.まさに福音です.
気になることは,副作用です.
日本の感染状況と同じで,MalaysiaでもCovid-19による死亡者数は少なく,国民100万人あたり10人程度です.
果たして,ワクチン副作用による死亡者が発生する率が0.00001%以下でないと,ワクチン による死亡者数の方が感染症による死亡者よりも多いという社会的な矛盾を起こします.
いずれにしても,中国と手を組むことにしたMalaysia政府の判断基準が気になります.
そもそも今回の感染病の起源はどこの国だったのでしょうか?
疑問2.中国はMalaysiaとの取引で何を引き出そうとしているのか?
今回のワクチン開発合意に遡ること,1ヶ月前の2020年10月13日Malaysia訪問した王毅中国外相は,年内にもMalaysiaに優先的に新型肺炎のvaccineを供給する方針を表明しました
Muhyiddin首相は歓迎の意を示したそうです.
中国は取引を持ちかけています.中国がMalaysiaに提示した条件は,
- 新型肺炎のワクチン優先支給
- パーム油の大量購入
MalaysiaがEU諸国と輸出でもめているMalaysiaの主要輸出項目パーム油を中国は大量購入することを示しました.
ワクチンもパーム油にしても,Malaysia政府としては泣き所を中国政府に突かれました.
一方,中国が取引でMalaysiaから引き出したものは,中国が推進する「一帯一路」projectへのMalaysia参画に関して合意です.
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中国とのワクチン開発合意に裏取引がある証拠はありませんが,歴史は繰り返されないことを祈ります.