Malaysia beer company Q3 2020

マレーシア一般

【マレーシア経済】ビール会社大手2社 3Q売上20%減少,意外な利益率知ってた?

2020年11月29日

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こにゃん
こんにちは,こにゃん(@こにゃん)です.

 

2020年Q3決算書が次々に発表になり,各業界のQ3(7-9月)の経営の明暗が見えてきました.

外食産業,観光業と関わりのあるビール会社の決算をみながら,2020年のMalaysia国内の状況を考えてみます.

 

Malaysiaのbeer会社大手2社の3Q決算

Malaysia国内beer会社大手のHeineken Malaysia Brehad.とCarlsberg Malaysiaの2020年3Q(7-9月期)決算が発表になりました.

HEINEKEN Malaysia Reports 3QFY20 Financial Results

Carlsberg Malaysia: Company Announcement - Q3 2020 Financial Results

 

2社の決算結果を横に並べて比較してみます.

Malaysia brew maker 3Q 2020 comparison

 

Malaysia大手ビール会社2社,HINEKENとCarlsbergの2社の3Q決算結果を比較してみます.

 

ポイント

ざっくり売上高▲20%,純利益▲40%と,両社とも同じ傾向を示しています.

 

2社の経営数字が同じ傾向を示しているので,ビール会社固有の問題というよりは,ビール会社を取り巻く外的要因による経営指標の悪化とみる方が妥当のようです.

 

売上は壊滅的に減っている一方で,2社とも利益率は10%前後を保っている点は注目です.

 

Beer醸造は設備産業の側面が強く,固定費が支配的です.売上高が40%も前年比で落ちたにもかかわらず,利益率を10%で食い止めたことは驚きです.

 

設備産業は固定費をまかなうために,高い水準の売上が求めらます.

損益分岐点を下回ると,売上減少よりも大きな幅で利益が減少します.

逆に,損益分岐点を上回ると,売上高に対する利益の増え方は大きくなります.

 

去年までの利益を見ていると,良好な経営をしていたことが見えてきます.

 

Beer会社3Q決算悪化の3つの理由

HINEKEN Malaysiaの決算報告書を読むと,3Q決算が前年同期比で悪化しているか背景が述べられています.

 

ポイント

  • 売上減少の原因は,beerの売上が15%近く落ちたことです.たび続く行動制限令により経済活動が落ち込んでいる.
  • Barやnightclubなど,再開許可を得られていないお店はいまだに営業を再開できていないため,酒類の販売に影響を与えている.

一部重複しますが,私が推測する3Q決算が回復していない原因は次の3つです.

 

  1. 旅行客への国境を閉鎖したままで,観光に関わる飲食業が荒廃
  2. Malaysiaの国民性から,家飲みよりも,同僚・友だちと外食時にbeerを飲むことが多い.感染症防止で大人数での宴会が減り,beerを飲む機会も比例して減った.Online飲み会も浸透していない
  3. Bar,nightclubなどの閉鎖

1.外国観光客の98%減少

国民の60%以上がIslam教で,飲酒は忌避行為とされています.

飲酒をする可能性があるのは,国民の30%前後のnon-Muslim,外国人滞在者と外国旅行者だけです.

 

2019年は,2,600万人の外国人旅行客がMalaysiaを訪れました.

Tourism Malaysia:Malaysia Tourism Statistics in Brief

 

Malaysiaの人口が3,200万人ほどなどなので,外国人旅行客の数の規模がわかっていただけると思います.

 

しかし,2020年8月単月では,国外旅行者のKLIA利用数は前年同月比98%となっています.

Malaysia Airports : Traffic snapshot

 

結果,飲酒をする可能性のある旅行客がほぼいなくなったことの影響は決して小さくないはずです.

 

2.会食の機会が減った

7月-9月は,RMCO(回復期行動制限令)中で外食は,SOPを順する限りで自由にすることができました.

 

しかし,感染症防止のため,大人数での宴会は自粛されていました.

 

私の中華系の同僚も,宴会の時に1杯,2杯お酒に口をつけるくらいで,付き合いではお酒を飲むけど,自宅では飲まない人が多いです.

中華系の同僚のうち,大体10人に1人だけはお酒が好きと言っていました.残りの2,3人は付き合いでお酒を飲みます.

 

宴会が減れば,付き合いでお酒を飲んでいた人たちは余計にお酒から手が遠のくのかと思います.

日本のように,online飲み会(いわゆる”Zoom飲み”)は,当然Malaysia人の間では流行っていません.

 

3.Bar,nightclubの閉鎖

3Q(7月-9月)といえば,Malaysia国内はRMCO(回復期行動制限令)中で,ほぼ全ての日常生活,経済活動が許されていました.

 

例外は,restaurant licenseを持たないbar,nightclubの営業です.

RMCO中も,営業再開は許可されませんでした,

 

(ただ,隠れてnightclubが再開していたという話は,日本人の男性同僚経由で聞きました.本人が実際に行ったかは,あえて聞きませんでした.)

 

Beerの売上のうち,bar,nightclub経由の割合は分かりません.

日本のbeer会社の経営回復に比べて,Malaysia国内企業の立ち直りが遅いのは,日本では接待を伴う飲食店の営業が許されていたことも要因ではないかと推測します.

 

日本のビール会社決算と比較,体力のあるMalaysiaビール会社

beer

サッポロホールディングスの2020年3Q決算も発表されていましたので,Malaysia国内ビール2社の決算結果と比較してみます.

サッポロホールディングス 決算短信

 

2020年1Q-3Q決算数字を比較します.通貨は,日本円 10億円にしています.

なお,Malaysia Ringitと日本円の為替は25.43(2020年9月末)を使用しています.

Brew maker 1Q-3Q 2020

 

3社を比較して私が気になったのは,

ポイント

  • サッポロホールディングスの売上高は13%減少に抑えられているにも関わらず,1%の赤字転落
  • Malaysia2社は売上高が40%以上の急激な経営環境の変化にも関わらず,税引き前利益率は10%代を維持

 

日本国内の3Qビールの国内需要は9%減少ということで,まだ完全に前年同期比には回復していないようです.

サッポロホールディングスの売上高減少は市場縮小による外部影響のようです.

 

日本は飲食店は通常通り営業をしていますが,外食需要自体の落ち込みが決算に与えた影響は大きいとのことです.

この点はMalaysiaも同じです.

 

在宅勤務が増えたことで職場での飲み会は激減したと日本本社の同僚に聞きました.

 

Online飲み会はあるようなので,居酒屋経由のビール消費量は減ったとしても,在宅での消費量が補っている構図はあると見られます.

 

一方で,Malaysiaのビール会社はMCO期間中に生産を2週間以上止めていました.

真っ先に政府から営業再開しの許可をもらっていましたが,1年間52週ある内の2週間(4%)の生産を止めたのですから,単純に言えば売上高を4%失ったことになります.

Malay Mail: Putrajaya confirms terminated Heineken, Carlsberg’s factory permit during MCO

 

日本ビール会社の工場が営業停止になったという報道は聞いていませんので,生産環境としては圧倒的にMalaysiaの方が遅れを取りました.

 

いくつか日本とMalaysiaのビール会社を取り巻く環境を見てみても,日本の方が優位のようですが,結果はMalaysiaビール大手2社が黒字を維持しているという意外な結果でした.

日本の他のビール会社は前年会計上の処理で黒字になっているところもありました.

 

Malaysia大手ビール会社2社が黒字を保てているのは,もともと高利益体質だからです.

 

ビール製造は大規模投資による規模の経済が働く業界です.

Malaysiaは酒類に対して規制が厳しく,投資金が障壁となっているのに加えて,厳しい政府規制がビール業界参入の障壁になっているとも言えます.

 

結果として,Malaysia国内には大手は2社しかおらず競争が激化しにくいという構図が窺えます.

 

こにゃん
Malaysia国内のnon-Muslim人口は,1,000万人以下です.

1,000万人未満の飲酒市場にビール会社数2社が最適かと言われると,疑問もあります.

 

まとめ

新型肺炎の影響が残る2020年3Q決算を通して,Malaysiaビール会社の経営体力の強さが印象に残りました.

 

売上高が40%も減少している現状は,本来であれば壊滅的と言わざるを得ません.

この状況を打開するには,外食産業,観光業の復興が必須ですが,2020年中は政府は防疫対策に主眼があり,救えるはずの業界が救われていません.

 

少し驚いたのは,Malaysia国内のビール会社の納税率です.

HEINEKEN Malayasiaの場合,消費税,輸入税を含めた政府への税金が,売上の54%を占めます

Carlsberg Malaysiaの場合は,47%です.

 

analysis of Heinekenn group revenue

出典:Heineken: Annual report 2019

 

簡単にいうと,ビールの販売単価の半分は税金ということで,ビール会社は政府にとって金を産むガチョウと言えます.

 

2020年11月現在,2021年予算作りが行われていますが,HEINEKEN Malayisa取締役社長は政府に対してさらなる酒税を貸さないように訴えています.

 

酒税をあげることをすれば,違法なお酒が市場に流通することを恐れての発言です.

 

お酒全般がMalaysiaでは忌避すべきものですので,政府としては悪を取り締まるつもりで酒税を徴収している可能性があります.日本における,タバコ税の議論に似ています.

 

HEINEKEN社長の発言の裏を読めば,政府から酒税をあげる働きかけがあるとも読み取れます.

 

Malaysia政府が優遇するBumiputera(土地の子).お酒を飲むのは,移民の先祖と外国人だけです.

酒税はいわば,土地の子の経済を苦しめることなく,効率よく税金を集められる税金なのです.

 

 
こにゃん
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