Malaysiaは株式投資の利益は非課税と聞いたので,投資の勉強を始めてMalaysia株で資産運用を始めても利益出ますか?
Malaysia駐在員になった時に資産運用に悩んでいませんか?
Malaysiaは金融投資で得た利益に対しては非課税であるため,駐在員のような非居住者に対しては投資冥利があります.
私もMalaysiaに駐在すると現地の証券口座を開設して,Malaysia株式をはじめました.
日本では10年以上株式投資をしていたので,Malaysiaで株式投資をして資産運用をしたいと考えていました.
一方で,Malaysia駐在3年目のいま,もし過去の自分に助言ができるのであれば「Malaysia株投資はやめた方がいい」と伝えます.
本記事では,Malaysia駐在員にMalaysia株式をおすすめしない理由を紹介します.
「Malaysia株式は危ないから投資しないほうが良い」という一面的な説を唱えるつもりはありません.
私なりに,Malaysia株式に関する損失の面を振り返りました.
せっかくのMalaysia駐在員という恵まれた機会を活かすために時間を使えるような前向きの内容をお伝えできればと思い本記事を書いています.
Malaysia駐在員に株式投資をおすすめしない理由
Malaysiaの居住者であれば,比較的簡単にMalaysia現地の株式取引口座を開設することができます.
しかし,私は駐在員の方には現地でMalaysia株式投資をおすすめしません.
本記事で解説する”Malaysia駐在員に株式投資をおすすめしない理由5つ”は次になります.
- 定期預金に比べて優位性がない
- 投資の調査をする優先順位が低い
- 時間を味方につけることができない
- 為替変動が大きすぎる
- 感染症対策の遅れで経済損失が広がっている
5つの理由を一つずつ解説していきます.
1.定期預金の金利に比べて優位性がない
Malaysiaの定期金利は2020年3月以前は3%ほどありました.
2020年3月以降,武漢肺炎の蔓延によりMalaysia政府は経済凍結させる苦渋の選択をしました.
Malaysiaの中央銀行にあたるBank Negaraは,2020年7月から2021年7月現在までOPR(長期金利)を歴史的低水準の1.75%に据え置いています. →Bang Negara
5年間の保有期間では,定期預金に預けた方が平均的には利回りが良くなります.
定期預金に預けた場合と株式に投資した場合の利回りの比較は次の記事をお読みください.
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マレーシアの定期貯金と株式投資どちらがお得?【駐在員にすすめたい定期金利】
続きを見る
元本割れするriskのない定期預金が,平均的には株式投資よりも高い利回りを得られるのだとするならば,株式投資をする積極的な理由がありません.
ポイント
- 定期貯金で運用していると5年間で安定して14%〜16%の利息を得られる
- 5年間の株式保有をする戦略を取る場合,定期貯金に預ける戦略に(平均的に)優っていたのは2016年以前
2.投資の調査をする優先順位が低い
Malaysia株式全体は停滞していても,個別株では武漢肺炎で経済が混乱している中でも大きく株価を伸ばしている銘柄もあります.
しかし,海外駐在という貴重な時間を使って投資銘柄の選定に時間をかけることができるでしょうか?
Malaysia株式市場調査に時間がかかる
株価が伸びる可能性がある候補を見つけ出すには,決算分析,市場分析,競合会社分析など時間をかけて研究をする必要があります.
しかし,海外駐在員の駐在期間は長いようで短く,投資先選定にあまり多くの時間を割くことができません.
海外駐在員の駐在期間は一般的に3〜5年といわれています.
駐在期間は長いようで,意外にあっという間に過ぎます.
私も駐在して3年が経ちましたが,あっという間の3年間です.
貴重な海外駐在は仕事・私生活を満喫する
駐在1年目は海外での生活と仕事に慣れるのに必死でした.
平日は朝7時半には家を出て,帰ってくるのは夜9時.
出張者の付き添い,歓送迎会があると,帰宅するのは深夜12時前となり1日の中に”私の時間”を楽しむ余裕が全くありません.
休日は比較的ゆっくり過ごすことができています.
しかし,せっかく海外生活をできているのに休日は家にひきこもってMalaysia株式投資の学習をするのは,もったいないと思います.
株式が好きで一日中部屋で株の研究をしているのが好きということであれば止めません.
私にとって資産運用は人生を楽しくするための補助燃料です.
せっかく念願の駐在の機会を手に入れたのに,海外生活を楽しく過ごすことを忘れて,株のことばかりを研究するのは本末転倒だと考えています.
ポイント
株式で利益を出すには研究が必要.
しかし,駐在員には貴重な駐在の経験を他に活かすべき.
3.時間を味方にできない
投資をする上では,投資先と時間軸を考える必要があります.
個人投資家の味方は時間
専門的な投資家は,巨大な運用資金をもとに市場を動かして運用利益を上げます.
一方の個人投資家は運用資金は専門家にはおよびませんが,時間を味方につけられることができます.
5年,10年と長い時間の中で株価が徐々に熟成していくことを待つことで株式市場の中で個人投資家は生き残ることができます.
駐在員の投資riskは突然の帰任
海外駐在は,一般的に3年から5年の長さになります.
駐在員はいつか来る帰任の日を考えなくてはいけません.
駐在員が現地で持っている銀行口座は労働ビザをもとに取得しているので,帰任に合わせて口座の閉鎖が必要になります.
結果として,駐在員は個人投資家の武器である”時間”を活かして投資で利回りを得ることが難しくなります.
ポイント
会社の辞令を受けて帰任が来たときに,持っている株価がどん底に落ちていたとしても,否応なく損切りしなくてはならない可能性があります.
メモ
ただし,Private bankで口座を開いておいて,帰任後も現地口座を保有し続けることは可能です.
帰任後の海外資産は税制面で面倒
新興国株投資は,短期的な株価の振れ幅が大きいです.
長期間保有することで,安定的に配当を得ながら株価の上昇を待つことができますが,駐在員の場合は長期保有の戦略を取ることが難しいと言えます.
Malaysia駐在員が帰国するととともに,日本非居住者でなくなりMalaysia株を長期間保有するうまみは薄れて,税務上の手続きが面倒になります.
- 海外資産は一定額を超えると税務局に申請が義務
- Malaysai株式で発生する配当は一定額以上は税務局に申請が義務
- 日本非居住者としての,投資益対する非課税制度を利用できなくなる
結果として,帰任後もMalaysiaの証券口座で取引を継続するよりは,日本の証券口座でNISAを一部利用しつつ素直に米国株indexに投資した方が利回りが良いということになります.
ポイント
- 駐在員は,個人投資家の武器である”時間”を活かして投資で利回りを得ることが難しい.
- 帰任riskによって,強制損切りになる可能性がある
- 日本の居住者になった時点で,Malaysia株の税務局への申告義務が発生したり,投資益が課税対象になる可能性がある.
4.為替変動が大きすぎる
前の章で,駐在員はいつか来る帰任の日を考えなくてはいけない点を指摘しました.
帰任の時期に合わせてMalaysia株式売却を行い,現地通貨MYR(Malaysia Ringgit)の現金資産を日本円に両替しなくてはなりません.
為替は個人の力を超えた運
帰任の時に為替が有利な方向(円安MYR高)になっていれば文句はありませんが,それは楽観的な考え方で確率論を無視しています.
株価が下がっている上に,為替が不利に動いている時は二重で損失を抱えます.(負のriskを強調しすぎるのも,確率論を無視していますが…)
ポイント
個人でMalaysia株投資をするならば,為替と株価の2つの変数を考えなくてはなりません.
次のgraphは,2011年から2021年の10年間分のMYR/JPYの為替の推移を示しています.
私がMalaysiaに赴任した2018年ごろは為替がMYR = JPY 27円台でした.
2017年ごろにMYR = JPY 25円台を記録していました.
2018年時点の私は2015年以前の30円台をみて,2018年時点の為替は随分と円高MYR安だなと感じました.
2020年の武漢肺炎の経済混乱の中一時MYR = JPY 24円台まで落ち込みました.
2021年7月現在,MYR = JPY 27円台ですら 円安MYR高のように感じられるついこの頃です.
ポイント
初心者が持つ為替の感覚というのは相対的なもので信用してはいけません.
為替変動で外貨建て投資利益は簡単に振り飛ばされる
MYRと日本円の5年を期間とした為替変動をみてみます.
5年間の期間の為替変動をとった理由は,駐在員の駐在期間が一般に5年間程度であるからです.
Graphの見方
ある時点の為替 / 5年前の為替
例えば,2016年1月1日から2021年1月1日の為替の推移を見てみます.
- 2016年1月1日のMYR/JPYの為替は31.26
- 2021年1月1日のMYR/JPYの為替は25.92
2016年に日本円からMYRに変換して,2021年にMYRの同じ金額をそのままMYRから日本円に変換すると日本円の金額は17%目減りしています.
為替で日本円の評価額が17%目減りすると,5年間の投資利益は簡単に無くなってしまいます.
もちろん,為替が追い風になる可能性もあります.
例えば,2010年に日本円からMYRに変換して,2015年にMYRの同じ金額をそのままMYRから日本円に変換すると日本円の金額は20%増えています.
ポイント
為替は自分でrisk回避する余白が少なく,運の要素が強すぎる.
定期預金と株式投資のrisk回避は違う
Malaysia株に自分で投資している以上,為替のriskは全て自分で引き受けるしかありません.
定期預金は利回りは大したことはありませんが,次の強みがあります.
- 元本が保障されている
- いつでも解約できる
そして定期預金の強みは”帰任risk”に対する保険になりえると思います.
- 株式投資をしている場合に起こり得る,株価が下落している上に円高(MYR安)で資産を二重に減らす”泣きっ面に蜂”を避けられる
- 定期預金ならば好きな時に解約できるので,為替がふれたときに日本円に振り返る戦略を取りやすい
ポイント
- 個人でMalaysia株投資をするならば,為替と株価の2つの変数を考える必要がある
- 駐在中の間に為替の変動で20%の幅で変動することがある
5.Malaysiaは感染症対策の遅れで経済損失が拡大している
最後となる5つ目の理由は,Malaysia(と多くの新興国)特有のものです.
それは,2020年年初から流行している武漢肺炎の対策で大きく経済が傷んでいることです.
この記事を書いている2021年7月現在で,長引く都市封鎖で中小企業は長い冬を乗り越えられずに倒産が相次いでいます.
街中を歩くと「For Sale」の張り紙が貼ってある小売店・飲食店・ホテルが恨めしそうに並んでいます.
2020年3月に都市封鎖を発令して以来,2021年7月現在にいたるまで断続的に経済活動の制限令を発令しています.
2020年は3月と4月の2ヶ月間は厳格な行動制限令が発令されて,食品産業などの必須産業を除く企業活動が一律停止を命令されました.
ポイント
2021年は感染症の再拡大を受けて,Muhyiddin政権は「国家回復計画(National Recovery Plan)」の名の下,実質上10月末まで経済活動の制限を発表しています.
11月以降,経済活動が許可されたとしても既に倒産をしている企業が多すぎて経済活動の復興は時間がかかると思います.
仕事が制限されている一般家庭(特に貧困層)の預貯金も減少しており,行動への影響も懸念されまます.
Najib元首相のTweetのうち,赤字の日程は経済活動が大きく制限されている日を表しています.
2021年は経済がまともに稼働していた月が3ヶ月余りもない見込みです.
Tahun 2020/2021.
- PKP 1.0 (paling ketat),
- PKP 2.0 (separuh masak)
- PKP 3.0/3.1 (separuh masak)
- Total Lockdown (tak Total) pic.twitter.com/lVTFpzI4LL— Mohd Najib Tun Razak (@NajibRazak) June 17, 2021
2021年は電気産業はなんとか稼働率を60%に下げて稼働が認められたものの,車業界が2ヶ月以上も生産停止に追い込まれている状況で,経済への影響はかなり大きいです.
経済復興は2022年以降となりそうと私はみています.
当然,経済復興が遅れれば企業の株価の低迷が長期化する可能性が高まります.
ポイント
Malaysiaの感染症対策は長引き,経済は疲弊しており中小企業の倒産が相次いでいます.
経済回復は時間がかかり,株価への影響が懸念されます.
まとめ
Malaysia駐在員にMalaysia株式投資をおすすめしない理由を5つ紹介しました.
- 定期預金に比べて優位性がない
- 投資の調査をする優先順位が低い
- 時間を味方につけることができない
- 為替変動が大きすぎる
- 感染症対策の遅れで経済損失が広がっている
Malaysia駐在員の方には,無難に定期預金でコツコツと複利で金利を貯めることをおすすめします.
定期金利と株式投資の利回りの比較を考えた次の記事もあわせてお読みください.
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マレーシアの定期貯金と株式投資どちらがお得?【駐在員にすすめたい定期金利】
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ここまで本記事をお読みいただきありがとうございます.
日本に帰任された際は,日本の証券口座を開設して資産運用をしてください.
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私は日本在住の時はSBI証券で資産運用をしていましたが,豊富な金融商品と手数料が低いことが気に入っていました.
投資初心者の方でも,NISAを活用して投資信託で積み立て投資をすることで将来への蓄えを作っていくことができます.
積み立て投資は”時間”が鍵になりますので,いまこそSBI証券で積み立て投資を始めてください.