本日10月28日から,Klang Valleyに発令された2回目のCMCOは再延長となりました.
ややこしいので,勝手に”CMCO 2.1”と呼びます.
Malaysia統計局のdataを見ていると,消費者動向に明らかな変化が見えてきましたので紹介します.
CMCO2.1の到来,PCR検査陽性者は急増傾向
予想通りの2回目のCMCO延長
Klang Valley一帯に発動された2回目のCMCOが失効する1日前の,2020年10月26日にMalaysia政府はCMCOの2週間の延長を発表しました.
期間は,11月9日までの2週間です.
→Malay Mail: Ismail Sabri: CMCO in Selangor, KL, Putrajaya extended for 14 more days until Nov 9
MCO/CMCO/RMCOの失効前日になり,延長可否の発表が政府からあります.
1週間前には延長するかどうか決めて欲しいと,不満の声は強いです.
企業,学校など延長有無により対応が大きく変わってくるので,現場は右往左往するばかりです.
10月24日に,初めて4桁となる1,228名の新規陽性者を記録していたこともあり,CMCO延長はすでに暗い気持ちで予想をしていました.
Muhyiddin首相が10月23日に国王に国家非常事態宣言を提言していたことからも,政府としては感染拡大防止のためにあらゆる手を打つ準備をしていることを国民に印象付けました.
逆にいうと,国民の行動制限を緩めるつもりはない,と私は受け止めていました.
首相に非常事態宣言による政治的な狙いが少なからずあったと私は考えています.
国家非常事態宣言を国王に進言した日の混乱を書いたblog記事もありますので,あわせてご覧ください.
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2回目のCMCO 11日目,CMCO解除まであと3日で再び事態混乱へ
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指数的に伸びるPCR検査数,ついに初の4桁記録
PCR新規陽性者増加の勢い止まらず,10月24日には初の4桁の1,228名を記録しました.
Sabah州の刑務所の感染が大半ではありますが,初の4桁を記録したという事実は衝撃的でした.
Malaysia国内で,PCR検査陽性者累計数が初めて1万人を超えるのたのが,9月16日です.
感染拡大から,感染初期から8ヶ月かかっています.
陽性者累計が2万人を超えるのは,10月18日です.1万人の大台を記録してから,わずか1ヶ月で2倍になっています.
本日10月28日時点で,累計の陽性者数が29,441名ですので,明日10月29日に3万人を更新するのはほぼ確実です.
わずか,10月18日から10月29日の間,たったの11日間で1万人増えたことになります.
Malaysia国内のPCR検査陽性者数に関してまとめてみます.
ポイント
- 累計で1万人を確認したのは9月16日.感染初期からおよそ240日経過.
- 累計で2万人を確認したのは,10月18日.追加で1万人増えるのに,32日経過.
- 累計で3万人を確認するのは,10月29日と予想.追加で1万人増えるのに,11日経過見込み.
Malaysia国内では,毎日700名近い人がSOP違反者として摘発されています.
くれぐれも,SOPは遵守するように今一度お気をつけください.
2020年9月度消費者物価指数は1.4%減,デフレの兆し
2020年9月の消費者物価指数(CPI)は,前年同月比で1.4%減となりました.
項目別に見ると,大きな要因は交通費が10%と下がっていることです.
9月時点ではRMCOの段階で,移動制限のかかるCMCO 2.0発令前でしたので,交通費下落の要因は次の理由だと推測します.
ポイント
- 原油安
- 国内・国外観光需要減少
項目別にCPIの増減を見ていると,Malasysia国内の消費行動の変化が見えてきます.
総合的な指数である,headline inflation率から,価格変動の大きい食品価格・energy価格を差し引いた,core infration率は前年同月比1%増加でした.
ポイント
Core infration率がいわゆる”インフレ率”になります.
Malaysiaは1%のインフレを9月では達成したことになります.
インフレ1%という数字を素直には喜べません.
原油だけを除いたheadline infration率(inflation rate without fuel)を見ると,前年比0.1%増となっています
前年の成長率が2.0%近くあったことを考慮すると,前年比0.1%増は実質的なデフレ傾向を表しています.
さらに,原油産出国のMalaysiaにとって原油価格は非常に重要です.
原油価格の世界的な下落は,原油採掘産業の痛手となります.
まとめると,
ポイント
- 9月度消費者物価指数は,前年比1.4%減.主要な要因は,交通費10%減少.
- 原油の下落要因を除いたinfration率は,前年比0.1%と前年とほぼ同じ.Infration率の鈍化傾向.
CMCO 2.0が発令された10月以降の消費者物価指数は,9月よりも悪化すると予想されます.
中所得国家の罠を抜け出せない,Malaysiaにとってインフレ率の鈍化は,さらなる経済の発展の遅れを意味します.
ASEAN諸国の中でもVietnamの工業国としての台頭を見ると,Vietnam-Malaysiaの経済差はますます縮まっていくでしょう.
まとめ
Muhyddin首相が国王に提言した,緊急事態宣言は国王によって10月25日発令の見送りが決まりました.
Malaysia経済にとっては一安心ではありましたが,まだまだ油断できない状況が続きそうです.
在宅勤務の強固な推進令により,人の移動は一層減っていきます.
人が移動しなければ,消費は減っていき,結果として国内産業の後退につながります.
「新型肺炎の感染拡大防止」と「経済活動の回復」を同時に行わなければならない課題に,Malaysiaは悩まされています.
いまの政府の立ち位置は非常に曖昧です.
経済活動を促しておきながら,Covid-19拡大防止策を推し進める面が目立ちます.
ポイント
- Muhyidinn首相は国家非常事態宣言を国王に提言(国王により見送り決定)
- 経済の中心であるKlang ValleyのCMCOは11月9日まで延長決定
- 在宅勤務の強制的な促進による,人の移動の減少
指数的に増加する陽性者,とデフレ傾向の経済.
二兎を追う者は一兎をも得ず.
政府がどちらを優先するのかはっきりさせないと,国民も政府を信頼して生活できません.
Muhyidinn政権は,国家非常事態宣言の国王による見送りで出鼻を挫かれましたが,ぜひ国民と対話をする場を持って信頼を回復してほしいです.