Klang Valley一帯で2回目となるCMCOが施行されて8日目です.
本日2020年10月21日(木)から,民間の管理職や公務員を対象に一斉に在宅勤務が義務化しました.
大臣発表が二転三転して国民は右往左往するばかりでした.
Malaysia政府はもっと国民との意思疎通を上手に行うべきです!
突然の上級大臣発表,100万人対象の在宅勤務義務化
2020年10月20日(火),Ismail Sabri Yaakob上級大臣はCMCOが実施されている地区の民間企業.公共機関の管理職,監督職は2日後,10月22日からWFH(Work From Home,在宅勤務)に切り替えるように指示をしました.
ポイント
- 10月22日(木)から,CMCO対象地域(Klang Valley,Sabah州)の民間企業,公共機関の管理職,監督職は在宅勤務に切り替える
- 在宅勤務移行対象は,CMCO対象地区の産業従事者80万人と公務員20万人の合計100万人と試算.
- 在宅勤務に切り替えられず現場で働く人には,PCR検査受診を義務付ける.検査費用に関しては,SOCSO(労働者社会保障機構)が負担.
- 目的は,感染症拡大予防のために職場の人数を削減すること.
私は慣れっこになってきましたが,重大政策を大臣の一存で突然発表して2日後に施行してしまうのが現Muhyidinn政権です.
SOCSOは,労働災害の補償を目的とした労働者社会保障機構です.
遺族年金,障害年金,医療保障,労働災害補償を担う機構で,Malaysia国籍労働者とと永久在住visaを取得した外国籍労働者の雇用主が強制加入となっています.
傷害補償制度については,駐在員を含む外国籍労働者も強制加入となっています.
→FMT: 1 million workers in CMCO states ordered to work from home from Thursday
大臣発表翌日,在宅勤務施行1日前にSOP発表
Ismail Sabri Yaakob上級大臣の突然の在宅勤務令発表翌日,10月21日になり在宅勤務令のSOP(Standard Operation Procedure,行動遵守基準)が発表になりました.
法令施行まで,実に1日前です.
今度は,MITI(Ministry of International Trade and Industry,通商産業省)のMohamed Azmin Ali上級大臣が,在宅勤務に関するSOPを発表を担当しました.
前日発表内容からの追加・変化点としては,
- 10%の管理職の出勤を許可.例外対象となる,会計,財務,管理,法務,生産計画,ITは雇用主からの許可書をもとに出勤可能.
- 特別出勤した場合でも,10:00-14:00の4時間しか出社は認めず,出社は週3日まで.
- 管理職以外の作業従事者は出社可能.
さらに,10月21日同日,再びIsmail Sabri Yaakob上級大臣が在宅勤務に関して,「飲食・日常品販売・警備部門に関しては,在宅勤務令の対象外で通常通り出勤可能である」ことを強調しました.
在宅勤務令が施行される前日となって,ようやく対象者がおぼろげにわかってきました.
経済界からは,Muhyidinn政権が事前相談なしの経済活動への制限を加えたことに反発の声が上がっています.
働く側からすると嬉しいけど,しわ寄せは民間経営者へ
在宅勤務義務化に関して従業員からは喜ぶ声も上がっています.
私の勤務する会社でも,10月22日以降のCMCO期間中は在宅勤務への切り替えが発表されました.
民間企業としては,政府の方針に矛盾しないように安全をとって,従業員の大半を在宅勤務に切り替える判断を行います.
同僚の多くは,在宅勤務については肯定的に捉えており,否定的な意見は少なかったです.
特に,お子さんをお持ちの家庭では,CMCO対象区域の学校・育児所が閉鎖されているために,日中のお子さんの世話が課題になっています.
CMCO2.0が施行された,Klang Valley(Kuala Lumpur,Putrajaya,Selangor州),Sabah州では,経済活動を止めずにCovid-19防疫を推めるという狭間で,家庭に無理が押し寄せています.
→New Straits Times: CMCO: 1.7 million students to be affected by school closures
在宅勤務が義務化されたことで,対象の家庭では,日中家で待機している子どもの面倒を見ながら仕事をすることが可能になりました.
一方で,在宅勤務義務化対象外の職種では,引き続き現場での仕事を続けなければならず,家で待機する子どもの育児は問題として残ります.
貧困層は在宅勤務へ切り替えが難しく,子育てを頼む経済的余裕もないという苦渋が重なっています.
民間経営者としても.従業員の在宅勤務化に伴い,在宅体制確立の遅れが懸念されます.国の方針に対して,民間が後追いで対応を迫られる構図になっています.
まとめ
今回の在宅勤務義務付け政策発表に関する政府側の問題は,
ポイント
- 国民に向けた具体的なSOP(行動遵守規定)を決めないまま,重大な政策を発表する
- 政策の基本方針しか発表せず,発表以降も閣僚の発言内容が変わるため,正しい情報が国民に伝わらない
- 事前に民間企業との調整をしないせいで,政策の無理が生じて,民間企業がしわ寄せを被っている
- 感染症対策の出社人数削減であれば,各企業に出社削減対象者を任せるべき.管理職が現場にいないことの弊害がある.
- PCR検査を現場で働く従業員の一部に義務付けているが,現場の負担が大きすぎる.PCR検査を定期的に受ける必要性が出てくるが,政府の指針が出ていない.
Muhyidinn首相自身,10月16日までの14日間を自宅隔離生活を過ごしながら執務をこなしました.
宗教関連の閣僚の一人がPCR検査陽性となりました.その閣僚は,Muhyidinn首相が座長を務めた国家安全会議に出席しており,接触を疑われる官僚は皆自宅隔離となりました.
→CNA: Malaysia PM Muhyiddin completes COVID-19 quarantine, tests negative
Muhyidinn政権の閣僚が自ら在宅勤務で実務を行い,「意外に自宅でも仕事ができる!」と気づいたのではないでしょうか.
「それなら,民間企業の管理職も同じように自宅で現場の指示くらいできるだろう」と内閣が自分の経験を国民に押し付けるお節介を思いついてしまったのではないか,と私は邪推します.
政策を果敢に示してくれる点は良い点なのですが,なりふり構わず突き進んでしまうところは現政権の悪いところです.
特に,国民との意思疎通が上手でない点はぜひMuhyidinn政権に早急に改善してほしいです.