本日2020年12月5日(土),Malaysia政府はCMCO延長可否を発表しました.
一部地域はCMCOを12/20まで延長.一部地域はRMCOヘ緩和となりました.
さらに,州境の検問を撤廃する発表もありました.
ようやく人の移動制限がなくなり,旅行もできるようになったり,経済活動も本格再開しそうです.
一方で,SOP取締りが強化されますので,充分にSOP遵守をお気をつけください.
KL,Selangor州,Sabah州は12月20日までCMCO延長
12月5日(土)17:00ごろ,Ismail Sabri上級大臣は会見を行い,全国で施行されているCMCO(条件付き行動制限令)の延期可否について発表を行いました.
→ Malay Mail: CMCO extended to Dec 20 in KL, Selangor, Sabah; ends in Putrajaya tomorrow
ポイント
- KL,Selangor州(一部地域除く),Sabah州などは,12月20日までCMCO延長.
- Putrajayaを含む州で12月6日でCMCO解除,12月7日以降はRMCOへ移行.RMCOは12月31日まで.
- RMCOに移行する州内でも,陽性者の多いred zoneについてはCMCOを12月20日まで延長.
CMCO延長発表で一旦は落胆しましたが,移動制限解除を聞き,私は政府の防疫対応が「全守備」から「攻めの守備」に変わったと思います.
- 全守備…国民全員の活動を制限することで人と人の接触頻度を減らして,感染拡大を防止することを主眼に置く体制
- 攻めの守備…感染の温床となっている感染予備軍に,国の資源を向けて,先行して感染を抑える体制
州境移動の検問と同乗者人数制限廃止
CMCOの延長発表と同時に,SOPに関する一部変更が発表されました.CMCO中に導入された,州境の検問(roadbloack)と同乗者数制限の撤廃です.
ポイント
- 12月7日以降,警察の許可証がなくても,地域または州を超えた移動は自由になる
- 検問所(roadblock)は撤廃
- 一車輌あたりの同乗者数の制限も撤廃(CMCO期間中は3人まで)
いたずらに国民の生活を制限していた州境検問と同乗者人数制限.
州境制限も,結果的にみれば経済活動の阻害要因になっているだけで,感染拡大予防効果があったか非常に疑問です.今回の制限撤廃判断は正しい方向だと私は支持します.
Ismail Sabri上級大臣は,検問撤廃して,これからはSOP違反者取締り強化をすると会見で発言しています.
検問にあたっていた軍人・警察官の任を解き,これからはSOP違反者の取締りにあたらせるのでしょう.
最近感染症の死亡者数が増えたことを受けて,陽性者の多い地域にある各企業工場に,KKM(Malaysia厚生省)がSOP遵守状況を確認するために抜き打ち訪問をしていると聞いています.
ポイント
- SOP違反指摘事項1件につき,RM1,000の罰金と改善要求
- 4件以上の違反事項指摘で工場操業停止
企業にとっては,1件RM1,000の罰金は大きな問題ではありません.
むしろ,工場操業停止が恐いです.
KKMが再開を認めるまでの1週間以上の稼働停止による損害は,罰金額よりも2桁,3桁も多いのですから.
一個人としては,移動制限が解除されて嬉しいです.
同乗者人数制限は,お子さんのいる家庭から多くの不満が出ていました.せっかくの休日も家族でどこにも行けませんでした.
年の瀬も迫った師走.
私が住むKuala Lumpurは,予想通りCMCOが2週間延長になるという発表となり一瞬がっかりしました.
しかし,移動制限の解除により,年末年始の旅行はできるようになり,まずは一息という人も多いのではないでしょうか.
CMCOの意味はあったのか?
Klang Valleyに生活圏のある私Konyanとしては,CMCOの意義については懐疑的に見ています.
- CMCOがKlang Valleyで再発令された10月14日以降,新規陽性者数は1,000人台を維持.減少傾向がCMCOから1ヶ月以上たっても現れない.
- 集団感染(いわゆるcluster)が,CMCO突入後にも多数発生.特に,外国人労働者の集団生活での感染数爆増が深刻に.
2020年10月になって新規陽性者が増え始めて,慌てて導入されたKlang Valley一帯のCMCO.
政府としてCMCOという強力な抗生剤で何とか国内で着火した感染を鎮火したい心理は理解します.
CMCOから2ヶ月ほど経とうとする12月,振り返ってみればCMCOは抗生剤としての効果はイマイチでした.
CMCO以降も,新規陽性者数は増加して,集団感染も増えています.
集団感染は,社会の階層の中でも弱者にあたる,出稼ぎの外国人労働者の間で感染は広がっていました.
日によっては,新規陽性者の70%が外国籍ということもありました.
特に,世界的に有名な医療用ゴム手袋の会社Top Glove社での千人規模の感染は社会問題となっています.
CMCOとは結局何だったのでしょか?
CMCOとともに導入されたSOPで特徴的な規則は下記です.
→ 在マレーシア日本国大使館:【新型コロナウイルス】一部の州を除くマレー半島全域における条件付き活動制限令(CMCO)の規制(SOP)の詳細(11月9日から有効)(11月29日更新)
- 生活必需品購入や外食のための外出は,1世帯3人まで
- 車内の同乗者数は3人まで
- CMCO対象地域の地区・州を超える移動禁止
- 外食する際は,1 table 4人まで
- 教育機関・託児所の封鎖
多くの国民生活を犠牲にしたCMCO中のSOP.
一体どれだけの防疫効果があったのでしょうか?
どれも外国人労働者の劣悪な住宅環境改善とは関係がありません.
外国人労働者の劣悪な住宅環境を改善しようと,政府は住宅環境に関する政策を急遽打ち出しています.
CMCOの犠牲として特に,子どもたちの教育機会が奪われていることは深刻です.
11月9日以降,幼稚園の再開は認められましたが,CMCO対象地域の学校再開に関しては更新がありません.
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政府の今回発表は「攻めの守備」に移行しつつあり,私は評価します.
一方で,子どもたちの教育の機会を一刻も早く取り戻すように願っています.
まとめ
政府の姿勢が「全守備」から「攻めの守備」に変わったことを感じた,CMCO延長発表でした.CMCOに疲弊した国民にとっても一縷(いちる)の光が見えました.
本来であれば,再三延長されたCMCO期間は明日12月6日まででした.本当は,2日前の12月4日にCMCO延長可否の発表があるはずでしが,会見直前になって翌日への延期となりました.
Ismail Sabri上級大臣の会見が延期になった理由は発表されていません.
発表内容をみると,制限が緩和されていることから,直前まで経済復興派との意見調整をしていたのだと推測します.
本日の会見で,Ismail Sabri上級大臣は,
「CMCO期間中,1日RM300 million(日本円 約7,500万円)のGDPが失われる」
と発言しました.
全国規模でCMCOが施行されて約1ヶ月が経ちました.全国規模のCMCO期間中に押し下げられたGDP額はRM9 billionです.
経済の中心である,KL,Selangor,Putrajayaはさらに長い2ヶ月近いCMCOの制限下にあったことを考慮すると,RM15 billion近くはGDPが低下しているでしょう.
Q3(7-9月期) GDPは,前年同期比で2.7%減でした.Q3 GDPの内訳は別の記事に書きましたので是非ご覧ください.
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Q4(10-12月期)GDPは,RM15 billion押し下げられたと仮定して,前年同期比で4%(=15billion/350billion)程度はやはり減少しそうです.
新型ワクチン開発が順調に進んでいる報道もありますが,Malaysia国民の大部分がワクチン接種をするのは1年単位で時間がかかります.
2021年は,ワクチンなしで経済と感染症対策をどう両立するか考えないとこのまま経済が沈下してきそうで心配です.