海外赴任のときに私自身が「うつ病」になりかけた話を書きます.
海外駐在をしていてストレスが多すぎて心が重いと感じていませんか?
本記事を読むと,海外赴任でよくあるストレスの要因が分かるだけでなく,帯同家族の心についても気配りができるようになります.
なぜなら,私はMalaysiaで駐在員を3年以上していますが,コロナ禍で「うつ病」の初期症状が出ました.今では心は軽くなりましたが,もしかしたら自分がうつ病を本格的に発症していた可能性も充分にありました.
この記事では,うつ病の症状,海外赴任特有のストレス要因と私の体験談をまとめました.またストレスと向き合うための本も紹介しています.
この記事を読み終える頃には,ストレスと上手に付き合いながら海外駐在生活を家族と楽しめるようになります.
海外駐在は実はブラック?
「海外駐在員は家も車も支給されて,快適な生活を送っているんでしょうね」と妬まれることもありますが実態はストレスが多い職場環境.
残業は月に100時間超えるブラックな環境に追いやられることがあります.
海外赴任のストレス要因
海外という新しい地に慣れるのに時間がかかりますし,英語でのコミュニケーションに歯痒さを感じたり,家族・友達と離れ離れになるなど様々なストレス要因があります.
ストレスをためすぎて症状が悪化すると精神疾患・体調不良により,早期帰任となります.
早期帰任は本人にとってはキャリア向上にもならないばかりか大切な身体を蝕まれる結果となってしまいます.
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海外ではできなくて「当たり前」
最後に私が海外赴任研修の際に聞いたアドバイスを共有します.
ポイント
「異国の地で簡単なことでもできない自分にイライラしないで,できないことを楽しむ心の持ち方が大事」
日本で生活していると,例えば何かを買うにしてもどこのお店で買えば良いか,どの商品が良いか予め「勘」が働きます.
しかし初めて暮らす海外では,何でも思い通りに行かずストレスに感じることになります.
私は駐在先のMalaysiaで扇風機一つ買うのでさえ,どこのお店で買えばいよいかわからず週末かけても買えなかった自分が情けなくなりました.
海外で良い扇風機を買うための冒険をしていると思うと,ワクワクしてきて迷子になりながら新しい場所を開拓することが楽しくなってきました.
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駐在員本人だけでなく,帯同家族のうつ病も心配
自分だけはうつ病はかからないだろうと思わず,少しでも症状がある方は会社の産業医に相談をしてください.
うつ病の症状
うつ病に罹った場合,身体にも変化がありますので自分でも「おかしい」と思う症状があれば医者に相談が必要です.
- 食欲がない
- 性欲がない
- 眠れない,過度に寝てしまう
- 体がだるい,疲れやすい
- 頭痛や肩こり
- 動悸
- 胃の不快感,便秘や下痢
- めまい
- 口が乾く
帯同家族の心の健康にも注意
注意ポイント
駐在員であるご自身がうつ病になる可能性だけではなく,帯同の家族がうつになる可能性もありますので家族の方に該当する症状がないか確認が必要です.
家族帯同で赴任をする人に向けたアドバイスです.
一日仕事が終わって家族が待つ家に帰り,家で一日あなたを待ってくれていた家族に対して「言ってはいけないこと」は何でしょうか?
実は「今日一日何していたの?」という何気ない一言が相手をとても傷つけるそうです.
家族として海外駐在員に付き添うために日本での仕事を泣く泣くやめてきた場合もあるでしょうし,異国の地で新しい環境に慣れるのに必死です.
そんな時に,仕事から帰ってきた駐在員の家族から「今日一日何をしていたの?」と聞かれると,まるで「今日も暇だっただろうけれど,何か有意義なことでもしたの?」と皮肉を言われているようで頭に来ます.
ポイント
家族帯同で海外赴任をする方は,家で待ってくれている方には思いやりを持って接してあげてください.土日はゴルフばかりではなく,家で一緒に家族と過ごす時間が大切です.
私がコロナ禍のストレスでうつ病になりかけた話
ストレスで一番落ち込んでいた時から1年以上経過した時点でこの記事を書いており,いまは落ち込むことも少なく精神的には風通しの良い状態です.
当時のことを振り返ると今でも心が重くなりますが,自分自身の気持ちの整理と海外赴任をされている方への経験談共有のために実際に私が海外駐在中にうつ病になりかけた経験を書きます.
忙しいけれど充実感のある海外駐在
冒頭書きましたが,私はMalaysiaで駐在員をしています.20代での独り身での海外赴任でした.
赴任した当初は業務量が多くて,海外法人に付帯する人間関係により夜まで付き合いがあり,平日は「自分だけの時間」が寝る時間以外はない生活が続きました.
私は「一人で過ごす時間」を大切にしたい性格だったので,休日しか自由に過ごせる時間がない海外駐在員生活を疎ましく感じました.しかし,大量の仕事をこなしているうちに,自分の成長を感じられ充実感もありました.
コロナ禍で一人ぼっち
2020年から本格的に流行した武漢肺炎により私の海外駐在生活は激変しました.
Malaysiaでは2020年3月18日よりMCO(Movement Control Order,いわゆる都市封鎖)が実施され,必要な買い出し以外は一切の外出を認めない外出禁止令が発令されました.
2ヶ月以上もの間,会社には行けず自宅でオンラインで仕事をすることになりました.唯一許されたコンドミニアム(マンション)内のスーパーで買い物をする以外は散歩も許されず,1日の大半を部屋の中で過ごしました.
家でひとりぼっちになるとやることもなく,毎日新規陽性者の数を確認することが日課となり精神衛生上あまり良くない習慣がつきました.都市封鎖の延長発表が2週間おきにあったのですが,延長が繰り返された2ヶ月ほどは期待と失望を繰り返す一種の躁鬱のような気持ちになってしまいました.
コロナ禍での海外駐在員のストレス
コロナ禍で海外駐在員をしていて精神的に厳しかったのは次です.
- 「外出すれば逮捕される恐怖」
- 「感染症への恐怖」
- 「海外での孤独」
- 「ビジネス断絶への責任」
「外出すれば逮捕される恐怖」
街中では軍人・警官が検問を行なっており,外出の正当な理由がない人が通ろうとすると最悪逮捕される状況でした.
実際,私は日本からの手紙を受け取りに郵便物を受け取る帰り道に検問にあたり,30分以上尋問を受けて危うく逮捕されそうになりました.
緊急時は外国人に対する扱いは公平さを期待することができません.Malaysiaでは見せしめのような形で,外をジョギングしていただけの外国人たちを逮捕する報道がありました.
「感染症への恐怖」
感染症が蔓延し始めた頃は,「新型肺炎(Covid-19)」に対する情報が不足していました.感染した際の致死率,重症化率,身体的特徴と重症化傾向の相関などわからないことばかりでした.
そしてワクチンの開発には通常であれば5年はかかると言われており,ウィルスとの長い戦いを覚悟しました.
私は20代で身体は比較的健康でしたので,感染した時の重症化する可能性は少ないと高を括っていました.
感染することの恐怖はむしろ「隔離施設での取り扱い」の方でした.
異国の地で感染して隔離された場合,適切な医療対応がなされずにぞんざいに扱われるのではないかと心配していました.隔離施設に閉じ込められることで症状が悪くなるような気さえしました.
日本にいれば,日本の医療機関で適切な医療を受けられて,医療費についても補助を受けられるだろうという安心がありますが,Malaysiaで外国人である私が日本で受けられる医療体制を期待することは理に叶わないように思います.
「海外での孤独」
数あるストレス要因の中で,最も心への負担が大きかったのは「コロナ禍で海外に一人でいる孤独感」でした.
Malaysiaで都市封鎖が実施れていた2020年3月から2ヶ月ほどは,生身の人間と会話する機会がなく,画面越しで同僚と話すか,夜寝る前に家族と電話会議(FaceTime)をするだけでした.
私の住んでいる家の近くに同僚はいたのですが,都市封鎖がされていた当時は家族以外の人間と接触しているところが警察・軍人に見つかると逮捕されました.
外に出てもレストランは規制で閉店させられていて,当然のことながら服屋・雑貨屋・映画館などあらゆる商業施設が閉鎖されられていました.理髪店でさえ閉店していました.
幸いなことに,都市封鎖されている間も「サラリーマン」である私の給料は安定的にもらうことができましたが,「稼いだ給料を使う道がない」という悩みにぶち当たりました.
「お金の使い道がないなんて,そんな贅沢なことを言うな」と怒られそうですが,都市封鎖されたMalaysiaに住んでいた私は本当に「お金はあるけど,幸せになるために使えない矛盾」に苦しんでしました.
「ビジネス断絶への責任」
武漢肺炎の感染拡大を抑え込むために発令された都市封鎖により,2020年3月から数ヶ月の間はスーパー,医療機関などの必須業界以外は営業を停止する命令がなされました.
結果としてMalaysia国内の経済活動は凍結されました.
海外駐在員として立場が辛かったのは,日本本社からのMalaysia現地の取引先の問い合わせです.
都市封鎖で私自身自宅から身動きが取れない中,取引先がどうなっているか確認を求められて四苦八苦しました.取引先とのビジネスが停止したことがあたかも私の責任であるかのような本社からの問い合わせに閉口しました.
海外で働く意味を失う
ストレス耐性があると思っていた私ですが,コロナ禍で私生活が制限された結果,働く意味を見失いました.
日本に帰りたくても,人事からは日本への一時帰国は「推奨」されず,家族とも孤立して,生きる意味を見直し始めていました.
どれだけお金を稼いでも,一日中部屋に閉じ込められてお金を使うことはできませんでした.貯金額はどんどん増えていきますが,反比例して幸せはどんどん減っていきます.
うつ症状の初期症状
コロナ禍でストレスが溜まり,一人部屋で泣いたり,取引先が閉鎖されている責任を自分が原因んであるかのように自分で自分を責めてしまいました.
いま思うと都市封鎖中は精神が正気な状態ではありませんでした.散歩にすらいけず,外のレストランは閉まっているので,2ヶ月以上もの間,部屋からほぼ出ることなく,3食ともに一人ぼっちで食べました.
監獄のような環境に急に追いやられて「自分は何のために働いているんだろう?」と暗い気持ちに押しつぶされそうでした.
更に辛かったことは都市封鎖の終わりが見えなかったことです.2週間ごとに都市封鎖の期間が延長されていくのですが,2週間おきに期待が裏切られて失望へと変わっていきました.
うつ病からの回復
都市封鎖が続いている間は自分でも気づいていたのですが精神が確実に削られていきました.
夜は家族と電話会議で毎日30分話しながら気を紛らわしていましたが,都市封鎖が続いた2020年3月から,封鎖が緩和された5月中旬ごろまで人肌が恋しくて辛かったです.
徐々にうつ病の症状から抜け出せたのは,実際に会社に行けるようになり同僚と一緒に話をしたり,レストランでの外食が許されて好きな料理を食べた時です.
今でも都市封鎖明けに初めて食べた外食の味は忘れません.
私のうつ病初期症状については,都市封鎖による精神的な圧迫でしたので,原因である外部環境が変更されたことでうつ病の症状は徐々に改善をしていきました.
つらい時は一時帰国も勇気ある選択
家族帯同で赴任していた日本人同僚に聞くと,「家族がいたからこそ都市封鎖を乗り切れた」と言っていました.
「独り身で海外での都市封鎖をよくぞ乗り切った」と自分でもすごいと思います.
ポイント
精神的にきつい時は,思い切って日本への一時帰国をしてもよかったと,いま振り返るとそう思います.
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まとめ:逃げられないストレスと上手に付き合い海外駐在を楽しむ
会社は期待を込めてこれから成長する人に海外駐在の任を与えます.
しかし,ときには海外での生活・仕事が合わない人もいます.
海外赴任をしていて,心が疲れたと思ったら会社の産業医に相談をするようにしてください.家族を駐在先に帯同しているのであれば,ご家族の心身の健康にも気配りが必要です.
早期での帰国は決して逃げではなく自分を守るために必要な選択肢です.
海外駐在はストレスが付きまといますが,常に家族と自分の心身は健康を保つようにして海外での仕事を最大限楽しんでください!
ここまで本記事をお読みいただきありがとうございます.