本日2020年10月14日は,Klang Valley一帯(Kuala Lumpur,Selangor,Putrajaya)で再施行されることになったCMCOの1日目でした.
6月10日にCMCOからRMCOに移行して,4か月ぶりにCMCOへ逆戻りとなりました.
政府の2日前の突然の発表と,行動制限項目が公開されず情報が錯綜しました.
CMCO初日,表面上は静かな1日でした.
CMCO初日,出勤は車が少なくて快適
朝8:00にいつも通り自宅を出発して,会社へ車で向かいました.
検問所の再設置
CMCO発動後は幹線道路に検問所(roadblock)がおかれることが政府から通知されていたので,事前に会社から通行許可証を発行してもらっていました.
→Malay Mail: CMCO: Police to mount roadblocks again in KL, Selangor, Putrajaya
検問で提示した書類
- MITIが発効した営業許可書
- 企業が私が通勤することを正式に許可している通知
MITIは,Ministru of International Trade and Industryの略称です.
日本で言うところの通産省に相当するMalaysiaの省庁になります.
車の量は減って通勤は快適に
前回のCMCOの時は高速道路の料金所手前に検問が設置されて,軍人の人が通行しようとする車を一台一台止めて書類を確認していました.
今朝も同じように検問を覚悟して自宅を出発したのですが,肩透かしなことに検問所はありませんでした.
検問所がないばかりか,通勤の車が普段の60%-70%程度しかなく快適に運転することができました.
朝の車の数から推測するに,CMCOに突入してから30%以上の人が自宅勤務に切り替えたようです.
夜20:00の帰宅時は,高速道路の車は普段の40%-50%程度でした.普段より運転時間が10分くらい短く帰宅できました.
帰宅時は途中1箇所検問がありましたが,せっかく用意した通行証を見せるまでもなく,検問所の軍人のひとが車内を覗いただけで検問を通してくれました.
おそらく,SOPで定められた車内に2人未満の乗車規則に違反していないか検査しているのでしょう.
いつもこれ位道路が空いていると通勤の苦痛から解放されて嬉しいのにと思いました.
仕事はいつも通り,一方で子育て環境が不安定に
政府が約束していた通り,2回目のCMCO時はほとんどの経済活動に対する制限はありませんでした.
私が聞き取り調査をした範囲でもCMCO時に活動を停止したKlang Valley一帯の企業はありませんでした.
子どもは家,親は仕事へ
家庭にお子さんがいる同僚は,CMCO中に閉鎖になった学校・幼稚園・保育園の影響で日中子どもの世話をするために急遽休暇を取らなくてはいけなくなったという人が会社内にいました.
→FMT: Working parents face dilemma over children’s well-being during CMCO
夫婦のいずれかが専業で家事をしている場合でも,買い物の入場制限(1家庭2人まで)があるので,子どもが2人以上いる家庭では子どもと一緒に買い物にいけなくなります.
新型肺炎の拡大防止を行いつつ,経済活動を継続したい政府の意向は理解します.
2回目CMCOの結果として,学校を封鎖して子どもを自宅待機にしておきながら親は仕事で日中は外出するという政策上の矛盾が家庭に押し寄せています.
低所得層への悪影響
経済を継続したいという政府の目論見がありますが,家庭が不安定では経済活動の継続は困難です.
特に,低所得家庭では親は物理的な出勤が必須でありながら,子どもを有料の子守に預けることもできないという苦境に家庭を追いやります.
万が一,子どもが自立して自宅待機ができたとしても,貧困家庭では自宅での学習環境が整っておらず,学校閉鎖がそのまま学習の遅れにつながります.
低所得家庭へのCMCOの影響は深刻になりそうです.
Online環境にうつれないMalaysia
朝,通勤の車中で私が意外に思ったことは,60%-70%の人は政府がCMCOを再発令しても会社へ出勤するんだと言う事実です.
前回のMCO,EMCOの期間はほとんどの経済活動が禁止され,多くのMalaysia企業は自宅勤務に強制的に切り替えました.
1回目のCMCO移行後も出勤する人は以前の30%以下でした.
2回目のCMCOを施行する前,Malaysia政府は”在宅勤務への切り替え”を推奨していました.しかし,60%-70%(私の主観数字)の人が依然出社している様子を見ると,1回目のMCOで在宅勤務に切り替えて,業務に支障があったと考えられます.
例えば,
- 業務上必要なITが整っていない
- 業務管理に困難がある
- 物理的に会社で仕事をしなくてはならない職種が多い
そもそも,車社会のMalaysiaでは通勤時の感染riskが低いことも経営者に従業員を出社させる(在宅勤務に切り替えない)理由になっているのかもしれません.
変わる日本と,変わらないMalaysia
Malaysia在住の日本人の私からみると,日本とMalaysiaで社会の変化の仕方に差があることがわかります.
日本にいると気づかない変化でも,海外から日本を見るとその変化に気づくことができます.
疫病で働き方の変わった日本
日本では2020年4月7日に緊急事態宣言が発表されて,5月25日に宣言が解除された後も多くの企業で在宅勤務が基本となっています.
在宅勤務が主流に
私の取引のある日本の会社も,在宅勤務が常態化しており1週間に1回はweb会議をして顔を合わせています.
私はMalaysiaの会社から参加して,相手は自宅で参加されているので,空気の差はあるのですが,今では気にせずweb会議で打ち合わせをしています.
ポイント
日本は”緩い”行動自粛令にも関わらず,自粛令解除後も在宅勤務が主流となりつつあります.
沸点は高いが,沸点を越えると一気に変わる
日本は,新型肺炎という見えざる的により,社会構造が大きく変わりました.
日本は慣習を不文律として大事にする文化がありますが,一旦変化による圧力が高まり亀裂が広がると,一気に変革を起こします.
日本政治は,「国民の意見を最後まで誠実に聞こうとして,結局決めきれない」というのが基本ですが,いざとなると「もう調整しきれない,決断するから後は任せろ!」という政治判断が出てきます.
意外に変わらないMalaysia
感染症が蔓延した初期は果敢に私権制限を行い,経済活動までも停止したMalaysia国家ですが,政府の制限が緩むとすぐに日常生活に戻りつつあります.
在宅勤務があまり根付かない
Malaysiaは”厳しい”活動制限令を発動した後は,強制的に在宅勤務に突入しました.
しかし制限令が解かれた途端にもとの出勤生活に戻りました.
改めて,”比較的厳しい”制限令を発動しても,依然のような”在宅勤務”体制へはなりそうにありません.
政府の指示は聞くけれど…
M新型肺炎の拡大の初期段階で,強制的な都市封鎖に踏み切りました.(憲法上の規定がないために)日本政府が行えなかった厳格な私権制限を果敢にMalaysia政府は行いました.
「国民それぞれ貴重な意見はあるけど,みんなの意見を聞いた上で果敢に政府が決めます」
と言う風潮がMalaysia政治にはあるように私にはみえます.
Malaysia国民も政府の指令は遵守していますが,指令を遵守しているだけとも言えます.悪い言い方をすると「言われたからやる」という感じです.
いざ指令が解かれるとすぐに元の状態に戻ってしまいます.
在宅勤務も政府が命令したので企業は一時的に採用しましたが,いざ政府の指令がなくなると従業員に出勤させるようになりました.
政府が言わなくても柔軟に新しい働き方が根付くと良いのになと思っています.