早く友だちと食事に行ったり,旅行に行きたいです.
MCO 2.0は,(途中名称が変わると思いますが)2022年までは継続しそうです.理由は,ワクチンの接種が行き渡るまでの間,感染症拡大を抑える有効な政策が尽きてきたからです.
昨年2020年3月のMCOからずっとMalaysiaでの制限令を経験してきた私がMCO 2.0の経緯と今後の見通しについて書きます.
この記事は,次のような方にお役に立てるように書いています.
こんな方におすすめ
- Malaysiaに住んでいる方で,今後のMCO 2.0の行く末が気になっている方
- 今後Malaysiaに移住を考えられている方
この記事の内容は次になります.
本記事の内容
- MCO 2.0の段階を追った変化
- 首相会見のワクチン接種計画と今後のMCO 2.0見通し
MCO 2.0は第3段階へ
2021年早々に発令されたMCO 2.0で一気に2021年の経済展望は暗いものになりました.
第1段階:二兎を追うもの一兎もえず
MCO 2.0が首都圏を含む地域で施行されたのが2021年1月13日でした.
この時点がMCO 2.0の第1段階でした.
初めは2週間の期間での発令でしたが感染症の性格を考えると2週間でMCO 2.0の結果が出るわけもなく,世論的には延長ありきの4週間で考えていました.
ゆるい行動規制に疑問の声
対象地域が全国ではない点が不充分だと感じました.
工場や建設現場の稼働が許されていたことから感染予防に関して疑問視する声が多かったです.
Klang Valley, Putrajaya, Melaka Penang, Johore, Sabah, Labuan will come under MCO for two weeks beginning midnight Jan 13 Wednesday . Inter-state and inter-district travel will be banned. Roadblocks will be set up once again : PM Muhyiddin pic.twitter.com/A5izNc8nY3
— Melissa Goh (@MelGohCNA) January 11, 2021
MCOは感染症を食い止めるはずの劇薬です.
2020年のMCO 1.0は,経済をほぼ凍結することになりましたが,感染症の押さえ込みには一定の効果がありました.
しかし,MCO 2.0は不充分な感染症対策のために,結果的に,経済を悪化させるだけでなく,感染拡大に歯止めが効かず,陽性者数は日に日に増えていくばかりでした.
貧困層向けの経済救済策「Permai」
Malaysia政府は,「Permai」という名前の経済救済策を発表して,経済的に貧窮している人を中心に救済programを発表します.
支援規模としてはRM 150億,国民1人当たりを計算するとRM 470(日本円 約12,000円)です.
経済貧困層には国民1人あたりの計算よりは手厚い支援がなされるのでしょうが,それでも額としては心許ないという印象です.
PM Muhyiddin has announced an additional relief package worth RM 15 billion known as “Permai” with more than 20 initiatives lined up to help the people in weathering #COVID19 challenges pic.twitter.com/1NnIMx8FdS
— Melissa Goh (@MelGohCNA) January 18, 2021
Malaysia財務省大臣によると,MCO 2.0施行中の1日あたりの経済損失はRM 6億(日本円 約160億円)です.
Permai経済支援額 RM 150億は,MCO 2.0の25日分の損失を埋めるだけの効果しかありません.
MCO 2.0により,失業した人はMCO 2.0の期間が終わっても,経済貧困に陥るわけで,MCO 2.0の損失は個人差と影響の期間がだいぶ違うように感じます.
第2段階:感染拡大止まらず,陽性者数の未処理問題
Ismail Sabri上級大臣は1月19日に,MCO 2.0の対象地域をSarawak州を除く全土に広げて,期間を2月4日までとする発表を行いました.
感染をくい止めるために制限拡大
BREAKING: The government will impose the MCO on six more states from 22 January until 4 February.
The states are Kedah, Perak, Negeri Sembilan, Pahang, Terengganu and Perlis.
Defence Minister Ismail Sabri says this means the whole country is under the MCO, except Sarawak. pic.twitter.com/BtLWqQBnDL
— BFM News (@NewsBFM) January 19, 2021
1月21日には,先にMCO 2.0に入っていた首都圏を中心とするいくつかの地域のMCO 2.0の期間も後続でMCO 2.0が施行された地域に合わせて2/4までと延長となりました.
The MCO 2.0 in five states including the federal territories KL, Putrajaya & Labuan will be extended till February 4 : SM Ismail Sabri pic.twitter.com/MEkYrh5k0H
— Melissa Goh (@MelGohCNA) January 21, 2021
MCO 2.0の対象地域がほぼ全国に拡大したこの段階が,MCO 2.0の第2段階です.
長引く行動制限で疲弊する国民
MCO 2.0の第1段階から第2段階まで3週間ほどの期間がありましたが,政権内部からもMCO 2.0は4週間で終えるべきであるという声が出ています.
立場的には延長を唱えるはずの保健省からも,経済影響を懸念してMCO 2.0は4週間にすべきであると主張の声が上がります.
Najib元首相の手厳しい批判
首相経験者からもMCO2.0に対して重要な指摘があります.
Najib元首相
- 学校はいつ開校できるのか?
- 感染症対策最前線の人々の重圧が増している
- 感染が拡大しているにもかかわらず,SOPは緩和をしていいのか?
- 病歴のない若者が亡くなっており,医療対応に問題はないか?
特に,教育を受けられない子どもたちが将来安定した職に就けず,将来的な貧困層を増やす潮流を作ってしまわないか懸念しています.
「Malaysia学生の36%(150万人)が少なくともonlineで授業を受けられず、今後、中退が更なる深刻な問題になりうる」教育部前部長の指摘。
学生の3人に1人が教育を受けられない。貧しい家庭の子どもが取り残されてると思います。MCO 2.0で養育者の仕事が無くなって…悪循環を早く断ち切らないと。 https://t.co/Gh6KUwgpcr
— こにゃん 🇲🇾 マレーシア再入国&ホテル隔離 (@Konyan_blogger) January 23, 2021
未処理の陽性者数が出現
MCO 2.0がいつ解除となるかの重要な指標が,日々の感染症に関する患者の情報です.
1月29日から1月31日に,突然1日あたりの新規陽性者数が5,000人を超える日が3日連続となりました.
PCRの検査能力数を考慮すると,”ありえない数字”だと私は考えていました,
数字が不正確だとすると,日々の陽性者数が正しいのかどうか分からず,感染症対策の正しい方向性が掴めません.
2020年の未処理分って…
1月29日〜31日の1日5千人台の陽性者数の中には、2020年の未処理分も含まれていたそうです。
Selangor州知事は10日前未処理分と言ってたけど、公共と民間の医療機関を繋ぐはずの情報伝達網はだいぶ混乱してる模様。https://t.co/nNq0jInYqL
— こにゃん 🇲🇾 マレーシア再入国&ホテル隔離 (@Konyan_blogger) February 1, 2021
第3段階:ワクチンに希望を託す1年間
政府内部からもMCO 2.0は意見が分裂をしていましたが,最終的には2月4日までの制限令期限を2月18日まで延長をすることになりました.
MCO 2.0 | The MCO will be extended for another two weeks until Feb 18 with the implementation of stricter SOPs.
Details of stricter measures will be released in due time. https://t.co/6RrH1Xy0HT
— malaysiakini.com (@malaysiakini) February 2, 2021
感染症対策と経済保護の天秤
2月4日以降,MCO 2.0に関する方針が変わります.
ポイント
「経済活動はより自由に,SOP違反取り締まりはより厳しく」
ここからを,私はMCO 2.0の第3段階だと区別しています.
MCO 2.0は感染症を抑え込むための劇薬ではなく,感染速度を緩慢にするための抗菌薬に過ぎないと政府も黙認し始めました.
MCO 2.0の延長自体は政府からも反対論が出ていましたが,政治的な保身を考えると延長の一択でした.
しかし,反対側の意見も取り入れる形で,延長はするけど,大幅に経済活動の自由を認めることでbalanceを取ったのだと推測します.
経済活動を止めると,経済的に死に追いやられる人が増加するために経済は動かします.
しかし,何もしていないと批判されないために,Malaysia政府は厳格な取り締まりで国内向けに強固な態度を示そうとしているようにみえます.
首相の会見:ワクチン接種による希望の光
2月4日にMuhyiddin首相が国民向けの特別会見を行いました.
PM Muhyiddin in a national address confirmed the vaccine rollout will begin end of feb. KJ will be coordinating minister. Phase 1 Feb- Apr to vaccinate half a million front liners , phase 2 Apr- Aug for high risk group incl elderly > 60 . Phase 3 May - Feb 2022 , for 18 & above. pic.twitter.com/Wvkf2i8bzi
— Melissa Goh (@MelGohCNA) February 4, 2021
Muhyiddin首相の会見の内容を見て感じたことは,「MCO 2.0は,ワクチンが国民に行き渡るまでの1年間継続する」ということです.
政府としては,都市封鎖は行わないが,国民全員がSOPを遵守することを求めました.
SOPを遵守する限りは,活動を許していくという方針です.
MCO 2.0から,CMCO,RMCOと名称は変更するでしょうが,行動制限は1年間は続ける以外に政府としてはもう手がないという印象を受けました.
ワクチンだけが希望の光と首相自ら述べています.
首相会見の中で,ワクチン接種時期について初めて明確な計画が示されました.
- 第1段階(2月〜4月)第1戦で感染症対策に従事している人 50万人
- 第2段階(4月〜8月)感染症riskの高い人,60歳以上の人
- 第3段階(5月〜2022年2月)18歳以上の人
2022年2月までには国民の80%を超える人にワクチン接種を完了させて,集団免疫を達成することが最大の目標です.
ワクチン接種は任意となっていますが,18歳以上の国民は人口の80%以下です.
つまり,子どもを除く,すべての人が政府の接種対象になっているように聞こえます.
Khairy大臣がワクチン担当に
ワクチン計画発表と同時に,Covid-19免疫体制の統括にKhairy Jamaluddin科学技術革新省大臣が任命されました.
ワクチン輸送から,ワクチンのロット管理,接種対象者の記録管理など行政横断で行うことになるため,かなり重責の任命となります.
Malaysiaは,Pfizer社,AstraZeneka社,Sinovac社,CanSinoBio社,Gamaleya社など複数の国の異なる医薬会社からワクチンを供給してもらう予定です.
複数の供給元のワクチンを個別に記録管理できるかが大きな課題です.
出典:Malay Mail: Children won’t get Covid-19 vaccine since not tested by clinical trials, says minister
まとめ
ワクチン接種計画をMuhyiddin首相が発表したことで,国内に明るい見通しが広がりました.
しかし,逆の見方をすると,ワクチン接種が広く国民に行き渡るまでの1年間はMCO 2.0のような行動制限を続けざるをえないということを暗示しているように私は受け止めました.
経済を再起動したいという姿勢は明らかに伝わってきます.
しかし,感染症対策について方針がブレてしまい,最終的にはSOP違反者を厳しく取り締まるということで,一旦国民に対して感染症対策をしている姿を示そうとしています.
経済優先という姿勢を取るならば貫いてほしいです.
万が一,感染症が増えてきたときに行動制限を強化するということがないように冷静な判断を期待したいです.